素敵な王子様の育てかた。

王子であるからこそ、嫌でも受け入れなければならない苦しさは、私が考えるよりも相当なものだろう。
だからこそ、私がその苦痛を少しでも取り除いてあげなければならないのに。

私は無力だ。
近くにいるのになにもできやしない。ただ見ているしかできない。

「ごめんなさい……」

だから、王子にはその言葉しか言えなかった。

泣きはらした顔を、握られていない手で覆う。
これ以上、私の弱い部分を見られたくはなかったから。

王子はそんな私の頭を撫でる。
私の髪が王子の指に絡まって、そしてゆっくりと解けていく。

触れられた部分から熱が帯びるような感覚。
こんなに苦しいのに、それでも心のどこかでは、触れられたことの喜びが生まれていた。


こんなにも、王子のことを好きになっていたなんて知らなかった。

もっと触れて欲しい。
王子の傍で、王子を感じていたい。

そんな願い叶うはずもないのに、思いだけは膨らんでいく。

「泣かないで、ララ」

王子は顔を上げ、泣く私を慰めるように言った。
そして顔を覆っていた手を優しくどかし、涙で濡れた目頭からこめかみの部分を、自身の指で拭いながら話を続ける。

「……出るよ、夜会。これ以上ララにも迷惑はかけられないから。これが俺の運命なのだから、仕方ないことだ。第一王子として生まれた以上、そしてこの運命を受け入れていくと変わる決意をした以上、もう迷うことはない。次期国王として、しっかりとこの命を果たすこととする」

そう言い終えると、グッと強く私の手を握った。

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