素敵な王子様の育てかた。
……それからというもの、城へと行く当日まで慌ただしい毎日を送ることとなる。
貴重品の確認にドレスの選定、加えて自室の整理、はたまた侍女としての心得の確認など、休む暇なく動き回っていた。
あ、もちろんその貴重品の中には私の好きな本もしっかりと入っていて、正直どの本をどれくらい持っていくかで悩みまくっていたり。
おかげで夜は疲れ切って、熟睡するまでにそう時間はかからず、死んだように朝まで眠る。
こういうときって不思議で、思った以上に時間の経過を早く感じるもので、気づけはあっという間に城へと行く日になってしまっていた。
朝早めに起き部屋で軽めの朝食を摂ると、早速ドレスに着替える。
城へ上がるとあって、着ていくドレスは特別なものだった。
胸元にレースをふんだんにあしらった、薄い赤のドレス。
生地の色は私の髪と瞳の色に、わざわざ合わせたもの。
スカート部分も程よく広がり、ところどころに小さな花の飾りが散りばめられていて、とても手の込んでいる。
それは母が私が特別な日に着ていけるようにと、以前オーダーで作った一点もの。
普段は衣裳部屋に大切に保管されていて、完成してから一回も袖を通したことのないドレスだった。