素敵な王子様の育てかた。
「でもね、ララ。あなたのお陰で、今ライトは国王の元で勉強も始めているの。あなたが倒れた翌日かしら、国王のところへ自ら訪れて、国王になるために必要なことを教えてくれと頭を下げてきてね。……そりゃあもう驚いたわ。外に出られるようになったとはいえ、まだ先のことだと思ったから」
「王子が……?」
「ええ。今がむしゃらに国王の傍で、一生懸命頭に叩き込んでいるわよ。あなたが目を覚まさない間は、その勉強の傍ら、時間があればあなたのところに行って、いつ目が覚めるか、早く覚めて欲しいと横で祈っていたとセリスが教えてくれた。今まで人に興味なんてなかったのに、今では人間らしく他人を思いやることができるようになっている。あの子の願いがあなたに届いて、本当に良かったわ……」
あの微睡んだ世界の中で聞こえたあの声は、夢ではなかった。
王子は私の名を呼んで、私が目覚めるのを祈っていてくれたのね。
胸が熱くなる。
そして切なくなって、涙が溢れそうになった。
なんて私はこんなに幸せ者なのだろう。
もう十分よ。
その気持ちだけで、私はこれから前を向いて生きていけそうな気がするから。
喜びと切なさの狭間で、私は必死に涙を堪える。
そんなしんみりとした空気を打ち消すかのように、王妃様は突然話を切り出した。
「……それでね、ララ。今度の夜会なのだけど、その日はぜひあなたにも参加して欲しいの。ここまで王子を導いてくれたあなたに、その晴れの姿を見て欲しいのよ」