素敵な王子様の育てかた。


夜会か……。

王子が他の女性に笑顔を振りまいて、楽し気に話す姿を見なくても済むと思っていたのに、これでは嫌でも目に入って来てしまう。

本当は参加なんてしたくない。
王子の夜会での姿なんて見るだけで辛くなってしまうから。

でもそんなワガママ、私が言うわけにはいかない。


「かしこまりました。申し訳ありませんが、当日よろしくお願い致します」

だからそう言って、深く礼をするしかなかった。



王妃様と別れ、王子の部屋へ向かう。

中に入ると、王子は机に向かってなにやら書類のようなものを眺めていた。
机には左右に分厚い本が何冊か重ねて置かれており、その間で難しい顔をしている。

しかし普段見ることのない真剣な表情に、ドキリと胸が鳴った。

「おはようございます。お勉強中ですか?邪魔をしてしまい、申し訳ありません」

「おはよう。いやいいんだ。それよりもララはもう動いて大丈夫なのかい?あまり無理をしないでくれよ」

「ご心配おかけしました。もう大丈夫です、お気遣い、ありがとうございます」




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