素敵な王子様の育てかた。
私の顔を見ると、王子はその難しい顔からいつもの表情に戻った。
手に持っていた書類を机に置き、椅子から立ち上がると、グッと背伸びをする。
「なにかと面倒なことばかり書いてあって疲れるね。これが国王になると、毎日にらめっこなのかと思うと気が重いよ」
「国王様のお仕事は多岐に渡りますからね。仕方のないこととはいえ、お察ししますわ」
「まあ、でもこの国のためだからな。平和と発展を維持するためには、やるしかない。人々の笑顔を見られるのなら、やりがいはある」
王子の口から出た、前向きな言葉。
思わず驚いて、口をぽかんと開けながら王子を見つめる。
ほんの少し前まで、そんな言葉も清々しい表情もなかったあの王子から、今ではそんな頼もしい言葉が聞けるなんて思わなかった。
「……どうしたの?そんな顔をして」
「え、いや。凄く変わったなと思いまして。特に顔つきが、前とは比べ物にならないほど、凛々しくなられているなぁと」
「そう?……あまり気にしてなかったけど」
私の発言に、王子は自分の顔を鏡に映して確認していたが、どうも王子には違いが分からないようで、頭を傾げていた。
でも、本当に変わったと思う。
今では誰しもが王子の姿を見れば自然と首を垂れるほど、これまでなかった王子の品格が出てきている。
私も前のような失礼な振る舞いなんてできやしない。
これからは粛々と、王子に仕えていかなければ。
「それより、今度の夜会ララも参加できるんだって?」
「はい。侍女の立場ゆえ初めは断ったのですが、王妃様が是非に、と」
「良かった。俺、ララのドレス姿見たことがないから、とても楽しみなんだ」
そう言って、微笑みを浮かべた。