素敵な王子様の育てかた。
……いや、王子。それは反則。
そんな爽やかな笑みを浮かべて、そんな台詞を吐かないで。
楽しみだなんて、社交辞令でもそう言われたら、少しでも気にかけてくれているんだと、嬉しくなってしまうじゃない。
お陰で胸の高鳴りが止まらなくなって、顔を赤くしながら混乱して口をぱくぱくするしかできなくなった。
私の動揺っぷりに、王子は声を出して笑った。
――それからが怒涛だった。
侍女の仕事に加え、私も夜会に参加するために準備もあり……。
暇を見つけては、ドレスの選定や身体に合わせるための細かい調整、そしてそれに合わせるアクセサ
リーも選ぶ。
加えて会場の準備も使用人、侍女総出で準備をしたりと、ひと息つく暇も間もなく日は過ぎていき、気がつけば、当日。夜会の日となってしまった。
この日は一日、侍女ではなく夜会に参加するお客様として扱うからなにもしなくていい、と王妃様から告げられる。
朝食もわざわざ別の使用人が部屋に持ってきてくれたり、食後のお茶も用意されたりと、この日だけは申し訳なく思うくらいの待遇を受けてしまった。
しかし毎日、朝起きて王子の部屋へ行き、王子の食事の準備をして、と侍女の仕事が日常化されていたため、なにもしないというのは、なんとなく落ち着かない。
こういう時だからこそ、王妃様から渡された新作の続きを読んで時間を潰すのがいいのだろうが、今日の夜会が気になってしまって、とても読もうという気にはならなかった。
本来なら、早く読んで感想を王妃様に伝えるべきなのだが、それができないのが申し訳なく思う。
だが仮に読み進められたとしても、結局は作中の王子と現実の王子が重なって、いてもたってもいられない気持ちになるのだろうし。
だから仕方なく、時間まで部屋でぼおっとしていた。