素敵な王子様の育てかた。
午後になると、化粧と髪を仕上げてくれる使用人たちが部屋へ訪れる。
いつもは簡単に後ろでひとつに纏めていた髪の毛も、今日は香油で香りと艶を出しながら、しっかりと纏められていく。
化粧だって、目鼻立ちがしっかりと映えるようなもの。最後に塗られた桃色の口紅は、私の唇を瑞々しく潤わせている。
そしてドレスも華やかなものだった。
久し振りに絞められたコルセットは、息が深く吸えないほどに苦しいものだが、自然と背筋は伸びる。
その上に着させられたドレスは口紅の色と同じ淡い桃色で、胸元と袖の部分には小さなリボン、そしてスカート部分はフリルで重ねられている。
これまでの夜会での参加でも、これほど華やかでかつ、可愛らしいドレスなど身に纏ったことのない私であったから、やはり完成形を鏡に映しても違和感しかない。
実はドレスの選定の時、自分としては地味なドレスを希望していたのだが、自分の前に並べられたドレスはどれも豪華なものばかりで、望むようなドレスは一着もなかった。
しかもその時なぜか王妃様も同席していて、並べられたドレスの中から『ララにはこれが似合うわ!』と、このドレスを進めてきたのだった。
しかし当の私は、このドレスに見合うようなふわりとした女性でもなく、やんわりと断っていたのだったが……。
結果は、この通りである。
押しに弱い私。
……まあ、王妃様の命令を断る勇気なんて、私にはないから仕方ないんだけれど。