素敵な王子様の育てかた。
夕刻になり、会場へと案内役の使用人が部屋を訪れ、「お時間になりましたので参りましょう」と声をかけた。
緊張は一気に高まり、それに返事をする声が少し上擦ってしまったが、なんとか気を取り直して、使用人と共に下の大広間へと向かう。
廊下に出ると、すでに甘い香水の香りがふわりと漂よっていた。
階段を下りた先のエントランスには、それぞれ華麗な衣装を身に纏った貴族たちで溢れている。
貴族たちはそれぞれ大広間の扉の前で、招待状を見張りの騎士に見せ、中へと入っていく。
私にはその招待状は渡されていないのだが、騎士は私の顔を見るなり軽く礼をして中へ入るようにと促した。
大広間の中も、人、人。
名の通り広い部屋であるにもかかわらず、これだけの人がいると息苦しく感じてしまう。
既に帰りたいと思ってしまう私だが、抜けるわけにはいかない。
とりあえずひとりでいるのは心細いと、人ごみをかき分けるようにして、セリスを探した。
大広間の奥までいったところで、招待された貴族の男性と歓談しているセリスを見つける。
セリスは私に気づくなり話を止め、私に向けて手を軽く上げた。
「会えて良かったわララ。私も探していたところなのよ」
「ええ本当に。ひとりでいるのは心細かったから安心したわ。ところで、隣のお方は?」
「ああ。紹介するわね、私の兄のジェクトよ。私のひとつ違いなの。侍女になってからほとんど家に帰っていないじゃない?だから久しぶりに会って、話が弾んでしまってたの」
セリスから紹介されたジェクトは、私に笑みを零した。