素敵な王子様の育てかた。
辺りが少しざわつく。
周りがそれぞれの反応を見せる中、私は壇上で立つ王子を見つめたまま、動けなくなってしまった。
王族のみが着ることを許された、藍色の六つボタンの正装姿。
これまでに感じることのなかったオーラを纏っている。
そしていつも横に流してした黒髪は、今はしっかりと後ろに流し、その表情は固くも凛々しい。
堂々としたその出で立ちは、次期国王に相応しいものであり、なにより私がずっと思い描いていた、理想の王子様、そのものであった。
――胸の高鳴りが収まらない。
それと同時に、この手の届かない距離が、私と王子との本来の距離であるのだと実感させられ、切ない気持ちになった。
やはり王子は、王子であった。
そしていずれは国王となるお方だと。
この差は埋められない。
傍に駆け寄ることもできやしない。
私にできることは、この頭を下げ忠誠を誓うのみ。
これからの栄光を願い、ただ祈るだけなのだと。
痛いほどに思い知らされる現実は、私の心を抉る。
そしてそれだけ私は王子に惹かれていたのだと、改めて思い知らされた。