素敵な王子様の育てかた。
お、王妃様の自室!?
王妃様とこうやってお話するだけでも恐れ多いというのに、まさかの自室へ案内と!?
私の緊張は一気に最高潮。
手汗が異常に止まらない。
しかし断るわけにもいかず、素直に従うしかない。
私は王妃様の後をついて、部屋へと向かうことになった。
その際、緊張のあまり右手と右足が一緒に前に出て、ギクシャクとした歩き方になっていたのを、警護についていた兵士らしき人物が顔を笑いで歪ませていた。
だって仕方ないじゃないの!
王妃様のお部屋にいきなり通されるなんて、そう滅多にないこと。
よほど親しい人物じゃないと入ることを許されない、特別な領域なのよ!
そんな場所に、ただの伯爵令嬢である私が足を踏み入れるのだから、緊張しないわけがないでしょう!!
なんてその騎士には弁明したかったけれど、言うわけにもいかず心の中で叫ぶに留める。
王妃様のお部屋は、階段を上がって少し歩いた場所にあった。
扉の前には見張りの騎士が立っており、王妃様に一礼をしたのち、その扉を開ける。
「さあどうぞ、少し散らかっているけれど気にしないでね」
王妃様はそう言って、部屋の中へ入るように促した。
私は小刻みに震えた足を、一歩前に踏み出す。