素敵な王子様の育てかた。

……そこは私にとって、地上の楽園と言うべき場所だった。


王妃様の部屋は壁一面に本棚が置かれ、資料となる本や歴史書、そして今までに王妃様が書かれた作品がずらりと並べられている。

加えて窓側にある机には、書き途中の紙とペン。
左右にはびっしりと文字が書かれた紙が綺麗に摘まれている。


ああ……!なんて素敵なの!
まさに思い描いていた通りのお部屋だった!

ここで王妃様が新しい作品を生み出しているのだと思ったら、胸が熱くなってしまう。


「ごめんなさいね、本当汚いでしょう?」

「な、なにをおっしゃいますか!!ここは天国でしょうか?私このまま死んでもいいくらい……」

「あらあら、面白いことを言うお方ね。まだ死んではいけないわよ、あなたにはこれからやってもらうことがあるのだから。……とりあえずそのソファーに座ってくれるかしら?今お茶を用意させるわね」


王妃様は侍女を呼ぶと、お茶の手配をするように話す。

私は目をキョロキョロと辺りに散らしながら、言われた通り部屋の真ん中に置かれたソファーに腰掛けた。

言わずもがな、そのソファーはとてもふわりとしていて、座り心地がいい。
家にある固いソファーとはえらい違いだ。


……しかし、これは現実なのだろうか。
夢じゃないだろうか?

たった一回きり、決まりきった儀式のみでしか会うことのなかった王妃様が、今目の前にいて普通に会話している。

そして、作品を生み出す場所にいる。

そんな場所に私がいるだなんて……。

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