素敵な王子様の育てかた。
……ん?
それってどういう……。
王妃様は諦めず扉を叩き続ける。
やがてようやく、がたりと扉の向こうからなにかが動くような音が聞こえ、ゆっくりと扉が開かれた。
「……うるさいよ、母上」
「出てこないアンタが悪い!いつも言っているでしょう!?一回で出てくるようにと!」
「耳が痛い。今まで寝ていたんだ、少しは静かにしてくれよ」
「何時だと思ってるの!少しは規則正しい生活をしなさい!」
そこにいた人物は、目を疑うような様相をしていた。
黒い髪は伸びきってボサボサ、無精ひげも汚く生え、シャツもズボンもだらしなく、しかも裸足だった。
そして部屋の中は薄暗く、むわりとした独特な臭いが、扉を開けたことで廊下まで広がる。
……こ、これが王子?
次期国王となられる第一王子の姿なの?
自分が思い描いている王子様とはかけ離れた姿。
そりゃあ前の侍女たちが逃げ出してしまうのも、無理はないだろう。