素敵な王子様の育てかた。
「――失礼します、ララ様」
頬杖をつきながら物語の余韻に浸っていると、扉が叩かれ使用人のリュカが部屋へと入ってくる。
リュカは使用人の中では一番古株の使用人。
私はもちろん両親にも絶大な信頼を得ており、私たちの身の回りの世話も含め、全般を請け負っている。
言わば使用人のリーダーといったところか。
「どうしたの?リュカ」
「旦那様がお話があるとのことです。書斎へ来るようにと」
「お父様が?……なんだか気が乗らないわ。どうせいつものお小言なんでしょう?行きたくないわ」
「そう私に言われましても……。とにかく来るようにとのことで」
一気に現実に引き戻され、嫌な気分になった。
いつものお小言、つまり、早く相手を見つけろだの、見つからないなら相手を探してくるぞだの、私の将来についてのことだろうと思う。
とくに最近それが多くなっていた。
顔を合わせれば、話のどこかにはその話題が混じる。
おかげで父と会うのが億劫になってきたところだった。
また結婚相手の話か……、と席を立つ動作も遅くなる。
でも、わざわざ書斎に来いだなんて珍しい。
いよいよ本格的に動こうとでもしているのかしら?
……なんて考えると、ますます気分が落ち込む。
本当は行きたくはないのだけれど、断ったところで部屋に乗り込まれるのがオチだし。
「分かった、じゃあ行ってくるわ」
リュカにそう告げ、重い足取りで書斎へと向かった。