素敵な王子様の育てかた。
中に入った瞬間、そのじめりとした空気に、少し込み上げるものがある。

えづきそうになるのを、なんとか堪えた。


薄暗い室内。

カーテンはどこの部屋よりも生地の厚いものを使い、しっかりと閉められているため、外の光が漏れ入ることはない。

ただでさえ日当たりの悪い部屋だから、その暗さは昼とは思えないほどの暗さだ。

加えて空気の入れ替えもないのか、部屋の空気はその場でいつまでも停滞し、掃除も碌にされていないため埃っぽいような、かび臭いような、複雑に混じり合わさった臭いが充満している。

そして床には無造作に置かれているのか、落ちたのを拾わずそのままにしているのか分からないが、本やら服などが散らばっていた。


よくこんな部屋に一日中いられるわよね……!
私だったら絶対無理だわ!!


「我慢ならないんだろ?逃げたってかまわないぞ」


私の顔が無意識に顰めたのを、王子は気づいたのだろう。

半分自嘲ぎみに笑いながら話した。


しかし、これしきのことで逃げる私ではないっ!


私は息を止め、スタスタと窓のところまで歩いていくと、勢いよくカーテンを引いた。

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