素敵な王子様の育てかた。

「うわっ!何するんだお前っ……!!」

日陰で直接外の光が射しこむことはないが、それでも久しぶりに外の明るさを見たのだろう。

まるで陽の光を嫌うヴァンパイアのように、手で光りから逃げるように覆い、やけに眩しがる。


私はそのまま窓という窓を開けた。

途端、清々しい空気が部屋の中へ広がっていく。


「換気、換気!こんなかび臭い部屋、いるだけで気分が滅入ってしまいますわ!」

「や、やめろ!俺の部屋だぞ、ここはっ!」

「いいえ、やめません!まずはこの部屋をどうにかしなければ、王子は変われません!あとは徹底的に掃除をさせていただきます!王子はさっさとお食事を済ませて下さいませ!」


強めに言い返して、有無も言わさず王子を椅子に座らせ、食事を促す。


王子は不満げに口を歪ませて、伸びきった前髪の奥から私を睨んでいたようだったが、私はそんな視線も気にせず床に散らばった本や服を片付け始めた。


時折、王子の大きなため息が聞こえる。

片付けをしながらチラリと王子を見ると、繰り返しため息をつきながらも、もそもそと料理を口に運んでいた。


……まったく、ため息をつきたいのはこっちのほうよ。


本当、酷い部屋。

これは隅から隅まで徹底的に掃除しないと、綺麗になんてならない。

どうして伯爵家の令嬢が、こんな汚い部屋を掃除しなくちゃならないわけ?

王妃様のお願いと特典がなければ、さすがの私も匙を投げるわよ!


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