素敵な王子様の育てかた。

掃除は一日では到底終わりそうにもない。

翌日まで持ち越し、王子の部屋を徹底的に掃除することとなった。


その間、王子は部屋の奥にある湯浴み場に隠れて出てくることはなかった。

様子を見ようと時たまそこから出てくることもない。



どこまで閉鎖された空間が好きなのかしら。

息苦しくないのかしらね?


まあ正直、掃除の最中に部屋の中にいられるのも邪魔だし、やりやすいと言えばやりやすいのだけれど。

でも、普通自分の部屋なのだから、少しは気を遣ってなにか行動を起こしたっていいのに、あの王子はそういった素振りも全く見せない。

まったく気が利かないったらない。


そんな状態だから、もちろん必要最低限の会話以外はなく、しん、とした部屋でひとり、黙々と仕事をこなす。


王子と顔を合わせるのは、朝と食事のときだけだった。

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