素敵な王子様の育てかた。

侍女、つまり専属の使用人ということ。

一般的に貴族の侍女は、位を持たない庶民出の娘が務めているが、王族の侍女となれば話は違う。

重要な地位にいる人物には、必ず爵位のある家柄の娘が侍女を務めていた。

その理由として、知識と礼儀作法を身につけ、貴族のしきたりも周知しているため、国の重要な情報を漏洩される心配がない、という利点があるからだ。

加えて侍女を務めることによって、その家も箔がつき、さして運が良ければ王族の血を引く者に見初められ、王族のひとりとして迎えられる場合もある。

つまり、貴族で年頃の娘を持つ親は、その空きさえあればぜひ侍女に!と自ら売りに出るような美味しい話であるわけなのだが……。


「――で、なぜ私なのです?」

素直に、疑問に思ったことを父に話す。

そんな美味しい話、他の貴族が黙ってはいないはずなのに。

父が私を売り込んだのなら話は分かるが、どうして城の方から私を指名するのか、いまいち理解ができなかった。


「それは――……、今回ばかりはちと特殊でな。詳しい話はできんが、どうしてもお前を、との王妃からの命令なんだ」


「王妃様の!?」


「ああ。お前は王妃様の書く物語が好きでよく手紙を送っていたな?」

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