素敵な王子様の育てかた。
やがて王子は、ふう、と大きく息を吐いた。
そして唐突に私の名を呼ぶ。
「――ララ」
その瞬間、ドキリと胸が大きく跳ねた。
名前を呼ばれたのは初めてのこと。
呼ばれることが今までなかったから、名前を憶えられていないと思っていたのに。
しかも甘さを少し含んだ低い声で呼ばれたものだから、余計胸の高鳴りが収まらない。
「は、はい!なんでしょう!」
先ほどまでの勢いはどこへやら、動揺で声が少し上擦ってしまった。
しかしそんな私に、王子は気づいていないようで、そのまま話始める。
「ララの言う通りだ。俺は王子としてのプライドをすっかり忘れていたよ。……そうだよな、俺はこの国の王子なんだよな」
これまで言葉の節々に、投げやりな思いが込められていたように感じていたが、今話した内容には一切、それは感じられなかった。
まるで憑き物が落ちたかのように、とても柔らかな口調で、かつ希望が込められているような印象を受ける。