王子様とハナコさんと鼓星


「そ、そっか…」

「ビックニュースでしょ!抜けた穴に関しては、これから話し合うみたいだけどね。でもさ、その罵倒されていた人は相当ハラハラしただろうね。社長が見ていたって事だけでも冷や汗ものなのに、あの温厚な社長が直々に注意するなんてさ。目撃した子も結構厳しい事を社長が言っていたから驚いたみたいだよ」


「うん…はい、そうですね」


気の抜けた生返事を繰り返す。興奮している桜とは対照的に私のテンションはゼロ以下にまで下がっていく。


だって、その罵倒されていた人とは私の事。


社長が怒る姿を目撃しただけじゃなく、私自身も怒られ少し言い合いをした。そして結婚することに。


桜にこのタイミングでなんて言えばいいのかな。きっと今以上に興奮して驚くよね。


「華子?あれ、もしかして左遷の話を知ってたの?あまり驚いてない」


「うん…えっと」

「もしかして、怒鳴られていたのって華子のことだった?」


桜は察しがいい。口から「はい」の一言が重くて出て来ない。代わりに無理矢理笑顔を浮かべて頷いた。

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