王子様とハナコさんと鼓星


「あらら…そうだったんだ。それなら、昨日電話とかで教えてくれてもよかったのに」

腰に手を当て、わざとらしく頬を膨らませる。


「それがさ、ちょっと色々あって。ちょっと、きて」

桜の腕を掴み、トイレにむかって歩いて行く。


「実は、本当に色々あって話すと長くなるから簡潔に言いますと、社長と数日後に結婚することになったの」


「は?簡潔過ぎて意味がわからない。もしかして、この前の話を受け入れたの?」


「そう言うことになります」

桜は脚を止め、手で口元を覆う。口から出そうになる悲鳴を押さえ込み、グッと私に詰め寄った。


「ちょっ、それ本気なの?いや、賛成するような事は言ったけど、取り敢えず数ヶ月は付き合ってからでしょ?数日後って」


「いやね、私も昨日は罵倒されたりして、元カレの事とかで少し落ち込んでたからさ…こう…勢い?」


「元カレ?なにそれ…って、やばい。私こんな事している場合じゃないんだった。華子の背中が見えたからつい。と、取り敢えず分かった!でも、今日の夜、華子の部屋で事情聴取するからね!」


「あ、うん…」

時計を見て、桜は慌てて帽子をかぶる。名残惜しそうに手を振ると、まるで嵐のように去って行く。


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