王子様とハナコさんと鼓星
「じゃあ、頼んだよ」
「はい。ところで、村瀬…ではないですね。華子様はお仕事はどうされるおつもりですか?」
「俺はどっちでもいいけど、華子のしたいようにするつもり」
「お言葉ですが、退職なさった方がよろしいかと。桐生グループの跡取りである社長の奥様になるのですから、家で社長の不節制な生活を正して下さいませ」
「え?」
「ちょっ、針谷」
針谷さんの言葉に社長は慌てて前かがみに身体を起こす。
「社長は掃除が嫌いです。そのくせ綺麗好きにも関わらず部屋を業者に掃除をさせるのを嫌います。ですので、私やご実家のお手伝い様を呼んで掃除をしているのですが、私も忙しいですのでそこまで面倒が見切れません」
「それ、はっきり言いすぎだから」
「後輩として4年、秘書として5年の仲ですから遠慮は致しません。私との約束をお忘れですか?」
(約束?なんだろう…)
前屈みになっている社長を見ると、頭に手を乗せ背もたれに寄り掛かり手を回す。
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