王子様とハナコさんと鼓星


と、言うか…社長の綺麗な部屋は針谷さんやお手伝いさんが掃除していたんだ。


「針谷は俺には厳しいんだ」


「社長は王子様と言われていますが、とんだ傲慢王子です。お気を付けて下さいませ」


「え、え?」


「なにせ、桐生社長は大学時代に内定が決まっていた会社に根回しをして私を桐生グループに引き入れたのですから」


その時の事を思い出しているのか、ため息を吐きながら小刻みに首を左右に動かす。


「そんな事をしたんですか?」

「いや、ちが…くはないけど…針谷。頼むからこれ以上、華子の俺に対する好感度を下げるような事を言わないで。只でさえ、マイナスからのスタートなんだから」


そ、それ、昨日の…

「まぁ、いずれにしてもし働きたいのであれば今の提案を受け入れて下さいませ」


「あ…えっと」


(そうは…言われても…)

困った。そんな簡単に判断は出来ない。

助けを求めて社長を見ると、微笑んで返される。好きにすればいいってことだよね。
< 113 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop