王子様とハナコさんと鼓星
でも、よくよく考えたら…社長と結婚したら家に入ったほうがいいのかもしれない。
いずれは、私と結婚したって話が広まるだろうし、スタッフもやりにくいよね。
針谷さんが言う不節制はよく分からないけど、社長を支えないといけない立場にもなる。
私では力にならないかもしれないけど、せっかく結婚するのであれば力になりたいと思う。
情だって湧いてくる。割り切って何十年も共に生きるなんて無理だもん。
だから、覚悟しないと…だよね。
「わかりました。仕事は辞めます」
「え、いいの?」
「はい。あ、でも…志田さん達の左遷とかで来月から大変だと思います。そんな時に無責任に辞める事は心苦しいので、せめて3月まではこのまま働かせて下さい」
「うん。わかったよ」
背もたれにある手を伸ばして頭に触れた。いつも帽子を取られるから、ここにくる前に帽子はロッカーにしまっておいた。
「ご理解頂けて良かったです。私からは以上ですので、支配人達をお呼びします」
ソファーから立ち上がり部屋を出て行く。背後でドアが閉まる音を聞いたあと、社長が私に少し近付いて脚を組む。
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