王子様とハナコさんと鼓星
言えば助けてくれるかもしれない。頼みにくいけど桜の言う通りにしよう
。
「わかった。話して頼んでみる」
「そうだね。でも、どうしても社長が仕事とかで無理なら私に言ってね」
「ありがとう。私の事はこんな感じだけど…桜はどうなの?一ノ瀬君と結婚とか」
「私はコンテストの事で頭がいっぱい。奏多も結婚なんて微塵も考えてないよ。今は仕事が楽しいみたい」
「そうなんだ。一ノ瀬君って桜を溺愛しているからさ、そういう話があるのかなって思っていたよ。あ、お酒まだ飲む?」
冷蔵庫から冷えたお酒を取り桜に渡す。プルタブに指を引っ掛け音を立てて蓋を開けた。
同じように好きなお酒を取り、蓋を開けて飲みながら腰を下ろす。するとテーブルに置いたスマホが鳴る。
スマホを持ちロックを解除すると、1通のメール。
『寮にいる?少しだけ外に来れるかな』と書かれたメール。宛先人は桐生凛太朗。
(社長からだ。外って…社長が外にいるの?)
立ち上がり窓のカーテンを開けて外を覗く。寮の入り口に身長が高くすらっとした体型の男性の姿があった。何度となく見た細いのに逞しい背中。
「あ、いた…桜、ちょっと社長に呼ばれたから行ってくるね」
上着を羽織りスマホをポケットにしまう。髪の毛を手で梳かすと桜が頬杖をついて来た。
「なになに?もしかしてこの時間からデートのお誘いですか」
「違うよ。少し来てって連絡来ただけ。ここ待ってて」
悪い顔をした後に笑顔を浮かべ、私がみた窓から同じ方をみる。暗闇に潜む男性の姿を見つけ飲みながら手を振った。
「あーい!ごゆっくりと。私はここで見物してるわ」
「し、しなくていいから!」
桜に見送られ部屋を出る。少し長い通路を小走り歩き、エレベーターに乗り込んだ。
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