王子様とハナコさんと鼓星
見惚れてしまうほど、王子様は魅力的過ぎてこれ以上間近で見ることなんて出来なかった。
「ありがとうございます…指輪、嬉しいです」
(指輪なんてまさか貰えるなんて思っていなかった。しかも、こんなに私好みのデザイン。絶対に高い…よね)
私からは社長に何を返せばいいのかな。婚約指輪を貰った時はみんなは何をあげるんだろう。
「あの、社長?」
「ん?なに?」
「私からもお礼がしたいです。何か欲しいものとかありますか?」
「いいよ。何もいらない」
「そう言うわけには…こんな、高価な物を頂いて…何もしないわけには」
手を離すとその手を顎にのせる。社長が欲しいものを考えたけれど、そもそもこの人の事をよく知らないから何が欲しいなんて分からない。
「では、暫く待っていて下さい。貰ってばかりでは気が引けます。なので楽しみにしていて下さい」
こらから同じ場所で生活するんだもん。そのうち、嫌でもこの人の事を知る。それから、私の出来る範囲でお礼をしたい。
「いいのに。でも、まぁ、そこまで言うなら楽しみにしているよ」
手をもう一度伸ばし私の髪の毛を指に絡めて、すぐに手を離す。
「じゃあ、俺は行くね。夜は冷えるから早く部屋に戻りな」
「は、はい。あの、ありがとうございました」
お辞儀をすると、社長は軽く手を振り車に乗り込む。エンジンを掛けて走り去って行くのを見送りながら左手に光る指輪を空に照らす。
綺麗な指輪だな。永遠の証に完全無欠な愛か。
すこしキザっぽい。なのに社長が醸し出したムードのせいか、物凄くいい言葉に聞こえて…不覚にもまたときめいてしまった。
暫く外で指輪を眺めた後、部屋に戻れば桜が更に大騒ぎしたのは言うまでもない。
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