王子様とハナコさんと鼓星
会長と言う立場だから、てっきり威厳があって手厳しい人だと思っていた。
だから、今日は仕事をしている1日中、会長や会長の奥様に会うことを考えて緊張していた。
大反対されるかもとか、事前に社長が話したらしいが、私が一般家庭の家だと知り怪訝な顔をされかもしれない。イメージ良くないとばかり思っていた。
でも、それは名前を名乗った時に勘違いだと思った。
リビングに入った時から奥様の美和子さんは私に笑顔を向けてくれて、会長も笑顔はないものその雰囲気や声色からは友好的な印象だったから。
返事をなかなか返さないでいると、美和子さんはクスリと息を零した。
「あなた、あまりプレッシャーを掛けてはだめよ?」
「え?いや、そんなつもりは…」
「なかなかプレッシャーになる言葉よ。華子さん、安心してね、何かあれば私も協力するわ。これから大切な家族になるんだもの。なんでも、相談してね?サポートするわ。あ、もちろん凛太朗の悪口も話してオッケーよ!」
片目を閉じて社長と私を見る。笑顔で微笑む姿に社長も同じように微笑む。
「それは頼もしい味方だね。でも、残念ながら悪口言われるような事はしないから。母さんのおかげで女性には紳士的だよ」
「それはどうかしら?貴方のお父さんも昔そんな事を言っていたけど、私はいつも寧々さんにくどいてたわ」
「えっ?!待ちなさい、それは初耳だぞ!」
隣の会長が素早く反応する。心底驚いたと言わんばかりに目を大きく見開いた。その視線を受け流すと会長はショックだったのか口をつぐむ。
「父さん、ショック受けてるけど」
「凛太朗もこうならないように、気をつけなさいよね」
「はは、覚えておくよ」
「………」
(ふふ…社長の家族って、仲が良いな)
私の家族とは違う会話のやり取りに笑みが浮ぶ。
社長の家族って、なんか暖かいかも。
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