王子様とハナコさんと鼓星
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「では、婚姻届を受理いたしました。お疲れ様でした」
翌日、業務を終え凛太朗さんと待ち合わせをしてから近場の役所に婚姻届を提出した。
帰宅時間が過ぎてからという事もあり、人も少なくすんなりと出す事が出来た。
「なんか、これで結婚した事になるんですね。全然実感がわかないです」
「まぁ、紙を出すだけだからね。これからかな」
「は、はい。あと、てっきりおめでとうございます。って、言われるかと思っていたんですけど、あっさりしてて…」
「あ、それ、俺も思ったよ。おめでとうって言わないんだって」
薄ら笑いを浮かべながら、私に同意すると何かを思い出したかのようにポケットから1枚の封筒を差し出してきた。
「そうだ。これ、家の鍵とセキュリティーカードに部屋のパスワードを書いた紙が入っているから」
「あ、ありがとうございます」
「明日、手伝えなくてごめんね」
明日は仕事が休みのため寮から凛太朗さんのマンションに引っ越しをする事になった。
大きな荷物は実家に送り、衣服などはもともとシーズンに合わせて必要な分だけだったから、全て含めてダンボール4つほどでまとまった。
宅配業者に任せて、残りは大きめなバックに入れて持って行くことに。
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