王子様とハナコさんと鼓星


「いえ、お仕事ですし…荷物も多くないですから」


封筒をバックに入れて、車の前に到着する。いつものように凛太朗さんは必ず助手席のドアを開け乗り込む。


これは毎回で最近申し訳なくて仕方がない。彼の親切を断る訳にもいかない為、甘えてはいるけれど今だに慣れない。

「で、結局のところ家具はどうするの?」


凛太朗さんも車に乗り込み、エンジンをつけて出発する。


「明日見てきます。業者の方とか部屋に入れても大丈夫ですか?」

「いいよ。でも、その必要はないかも。昨日、寧々さんに掃除を頼んでいる日だったんだけど、気合いをいれて華子の部屋を色々したみたい。買うのは待って、どんな部屋なのか見て来てよ」


「あ、は、はい」

それって、家具を揃えてくれたって事だよね。

「なんか、何から何まですみません」

「全然。奥さんに何かしてあげたいと思うのは当たり前だよ」

「では、私も頑張りますね。かなり不出来な事もありますけど、よろしくお願いします」


コクリとお辞儀をすると、赤信号で車を止め振り向き、彼も同じようにお辞儀をする。

「こちらこそ、不出来な夫だけどよろしくね」

手を差し出され、その手を握るとギュウと僅かに力が込められた。


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