王子様とハナコさんと鼓星
(猫だ。凛太朗さんが言っていた猫ってこの子のことか)
私を真っ直ぐに見つめぴくりとも動かない。
柔らかく絨毯のように密生した銀色に輝くブルーの被毛。そして、宝石のように美しいグリーンの瞳。
(この猫、見たことある。確か、ロシアンブルーだ。初めてみた…綺麗)
じっと見つめる姿は私を何者か見定めているよう。
触りたい。そんな感情が込み上げて来たもの、人見知りだと凛太朗さんが言っていた事を思い出し敢えて無視してリビングを出る。
(部屋の整理をしないと)
あらかじめ使っていいと言われた部屋の前に行きドアを開ける。手で電気の電源を探ってつけると目に飛び込んで来たインテリアに一瞬だけ息が止まった。
「え…ええっ?」
何度も瞬きを繰り返して周囲を見渡す。
何かの間違いかと思ったが、言われていた玄関を入って右側の部屋はここ1つのみ。
バックを置いて部屋の中にはいる。
ダブルサイズのベッドに白とピンクを基調とした布団。チェストや化粧台も白とピンクといった女の子らしいデザインと色。カーテンなんて花柄。
どこかのお姫様の部屋のような内装。
(こ、これは凄い。可愛ものは好きだけど…これ、きっと…凛太朗さんが寧々さんに用意させたんだよね。私が家具を買うなんて言ったから…)
何から何まで買ってもらって申し訳ない。お金を返すと言っても凛太朗さんは貰ってくれないよね。
今までだって、ご飯にしても必ず出してくれる。私が奢ったのはコンビニでご飯を買った時のみ。
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