王子様とハナコさんと鼓星
木々が風で揺さぶられているかのように私の心臓も激しく揺すられる。
凛太朗さんの手は大きくて、男らしくゴツゴツしているのに指は細長い。すっぽり包まれているこの手に触れると心臓は毎回、異常なほど動きが速くなってしまう。
恥ずかしくてついキョロキョロすれば、信号が変わり歩き出す。
「待ち合わせ場所、ここから遠いの?」
「あ、いえ、もう少しです」
「そっか。あまり言いたくない事なら言わなくてもいいんだけど、その元彼とはどのくらい付き合ったの?知らなければ気にしないけど、会うならどんな関係だったのか気になってさ」
唐突に振られた質問に戸惑う。そんな事、聞かれるなんて思わなかったから。
「えっと、半年くらいですね」
「初めての彼氏?」
「は、はい…」
「なんで別れたの?」
理由を説明するのに躊躇う。凛太朗さんに言わないといけない事かもしれないけど、その事は本当は言いたくない。
「その…ちょっと色々とあって」
「色々ね。わかったよ」
打たれた相槌にコクリと頷く。
話したくないって悟られたのかもしれない。反対の立場であれば「色々って?」と聞き返してしまうのに凛太朗さんはそれ以上に追求しようとしない。
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