王子様とハナコさんと鼓星


その優しさに甘え前を向いたまま歩けばまた信号に引っかかる。すると「あ!」と声をあげて私を見下ろした。


「猫、みた?」

「あ、はい。綺麗な猫ですね。ロシアンブルーですよね?」

「そう。警戒心が強い子だから、懐くのには時間が掛かるかもしれない」

「気長に頑張ります。あの、名前はなんて言うんですか?」

「ゲンマって言うんだ。かんむり座って言う星座があって、1番明るい星のアルフェッカの別名がゲンマ。宝石という意味のラテン語なんだ。半円のような形が王冠のように見えてね、1番明るいこの星を冠の中央に輝く宝石に見立てたらしい。ちなみにアルフェッカは「欠けたものの明星」という意味から来た…って…あ、ごめんね、あまり興味ないよね」


苦笑いしながら気まずそうに、反対の手で自分の頭部を撫でる。


「つい、星の事になると白熱してしまって…」

「い、いえ」

少し、驚いた。凛太朗さんが物凄くキラキラしながら話していたから。好きって言っていただけある。かんむり座なんて知らなかったから。


「そのかんむり座は、冬でも見られるんですか?」

「ううん。春から初夏にかけてだよ。その時期になったら、見に行こうか」


「わぁっ!はい、楽しみです。あ、でも、それもいいですけど、また流星群も見たいです」


凛太朗さんを見上げながらそう言うと、ニコリと微笑まれる。

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