王子様とハナコさんと鼓星


「いいよ。買い物をして帰ろうか。お腹も空いてるしね。寒いから鍋とかいいな」


長い脚を組み、私との距離を詰めて来た。


「は、はい。では、鍋にしましょう。お魚派ですか?お肉ですか?」

「こう見えて、結構肉が好きなんだよね」

「意外です。でも、私もお肉が好きです」

「嗜好が合うね」

顔が近づいて来て、頭と頭が触れそうになり思わず俯いた。


「あの、ここは外ですけど…」

「人も多いから華子の声がよく聞こえるようにね」


(う、うそだ。聞こえないほど、人なんていないし、さっきまで普通に話していたのに)


鼻に通る凛太朗さんの香り。何度鼻を掠めてもいい匂いだなって思った時、1人の歩く足音が止まり私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「華子」

ゾクッと背筋が凍りつくような声に無意識に繋がれた手を離して振り向くとそこには聡くんの姿があった。


(き、きた!)

ベンチから立ち上がり、他人行儀に頭を下げれば彼はポケットに手を入れたまま近付き目ざとく凛太朗さんに視線を向けた。


「良かった。来てくれたんだ…って、だれ?知り合い?」

「あ…えっと」

ど、どうしよう。ついて来て貰ったのはいいけど、なんて言おう。


聡くんがベンチに座る凛太朗さんを見下ろす。凛太朗さんは何故か笑顔を浮かべて立ち上がると私の肩に手を回した。


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