王子様とハナコさんと鼓星
「その…」
「いいよ。たぶん俺が言った事はあってるよね。華子、あの彼が来た瞬間から身体が強張って緊張してたね」
「…はい」
「まぁ、言いたくなさそうだから聞かないよ。でも、もし次にあの男が何か言って来るような事があったら相談して。ああいうタイプは結構危険なヤツだから」
手を繋いだ手と反対の手で頭部を撫でる。
「はい。ありがとうございます。凛太朗さんがいてくれて助かりました」
「一緒にいただけだよ。さて、嫌なことは忘れて買い物してご飯を食べようか」
「はい」
歩き出す凛太朗さんに引かれて私も歩く。そっと横顔を見るとその視線に気付いたのか目が合い慌ててそらす。
聡くんが思ったよりあっさりと諦めてくれて良かった。それも凛太朗さんが一緒に来てくれたからだよね。
彼がいなければ、今頃どこかのホテルに連れ込まれていた。良かった。本当に安心した。
もう2度と聡くんに会いませんように。そう心で長い、握られた手を握りかえした。