王子様とハナコさんと鼓星


それからスーパーで鍋の材料とあらかじめメモに書いた必要な調味料を買い込む。


会計時にカードを出す凛太朗さんを制して自ら支払いを済ませ、近くにあるオシャレなデザインで有名なキッチン用品店で鍋のセットも購入してからマンションに戻った。


お互いに着替え凛太朗さんが「結婚してから初めての料理記念」だと言いだし、2人で並んでキッチンに立つ。


料理はしないと言っていたのにも関わらず、凛太朗さんは包丁の使い方も手際もよくほとんど1人で作り上げてしまう。悪いと思いながらも凛太朗さんに任せて食器などを出す方に回る。


その普段と違う光景をゲンマは離れた場所でじっと見つめていた。


「美味しい…暖まりますね」


完成した鍋をテーブルに置き、向かい合って座りながら食べる。社長が選んだ鶏塩白湯風のスープはあっさりで美味しい。

「そうだね。鍋にして正解だったね」


「はい。ほぼ凛太朗さんに作らせてしまって申し訳ないです。女の子なのに」

「そんなの関係ないよ。可愛い奥さんに尽くしてあげたいだけ」


(か、可愛いって…凛太朗さんはそういう恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなく言ってくる。こればかりは慣れない)

恥ずかしい気持ちを誤魔化すようにお茶を飲んで鍋を食べる。

すると、ずっと遠くで見ていたゲンマが忍び足で近づいて来て凛太朗さんの足に頬を寄せる。
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