王子様とハナコさんと鼓星
嫌な予感を感じて逃げようと身体を離す。が、私より早く両手を伸ばし前腕を肩に乗せた。
逃げ場をなくして俯くとゴツンと額と頭が音を立てて重なる。
「ちょっ、し、紳士的に…って」
「うん、だからこれ以上は何もしない。でも、この城の王子は24時を過ぎて魔法が解けた姫を食べようと狙っているんだ。魔法がかかっているお姫様に手を出さない王子は相当な臆病者な紳士。だけど、姫の魔法が解けるように王子も魔法が解けて傲慢な王子に変わってしまう」
「な、何を言って…」
「魔法が解けた王子は遠慮なんてしない。だから傲慢な王子に食べられたくなければ24時までに部屋に戻るようにね」
グリグリと額を擦りそのまま音を立てて触れるか触れないような口付けが頭部に落ちた。
顔と耳が真っ赤に染まり、その言葉の意味をなんとなく理解した私は慌てて腕を振り払い立ち上がる。
「わ、わかりました。ね、寝ます…お、お、やすみなさいませ!」
おかしな敬語でそう叫び、急ぎ足でリビングを出て部屋に飛び込んだ。ドアを閉めて鍵を閉めるとその場にズルッと座り込む。