王子様とハナコさんと鼓星
「お仕事大変なんだね。夜の仕事って大変なのに一ノ瀬くんは凄いね」
「バーテンダーになるの夢だったから。でも、結婚したら辞めないとかも」
「え?なんで?」
「桜にきっと大変な思いさせると思うし、子供とか家族が増えたら一緒にいたいから。だから、桜には悪いけど…まだ結婚は出来ないけどね」
「…そっか」
(なんだ。桜は一ノ瀬くんは結婚なんて考えてないって言っていたけど、きちんと考えてるんだ…)
「華子さん、仕事も辞めるんだってね」
「うん…ほら、まだ結婚したって発表はされてないけど、次期に本社と系列ホテルの課長クラスを集めて発表するとか言ってたから、私と結婚したって事は知られる。そうなると、他のスタッフもやりにくいだろうし…なによりも社長をよろしくって言われたから、家に入って支えないとって決めたの」
「凄い覚悟だよ。俺より華子さんの方が凄いよ」
「なんて…今日は朝寝坊して社長にご飯を作ってもらったの。本当にダメだなって落ち込んでたの。だから今日から名誉挽回する為に頑張るの」
「その勢いだね。じゃあ、俺はそろそろ戻るわ。呼び止めてごめん」
「ううん。またね」
お互い手を振って私はトイレに向かい、一ノ瀬くんはエレベーターに乗り込む。