王子様とハナコさんと鼓星
「離して欲しいなら華子も抱きしめ返してよ。ちょっとでいいから。そうしたら離してあげる」
(は、本当に…離して、くれるの?)
ゴクリと息を飲み込み、意を決して凛太朗さんの脇腹の服を掴んだ。
「ちがう。背中だよ」
(うぅっ…だ、だって…)
許して欲しいけど、凛太朗さんは背中に手を回すまで離してくれない。優しそうに見えて強引なこの人から解放してもらうには言う通りにしないと。
脇腹から手を伸ばし、そっと背中に触れた。硬い背中。男の人らしい感触にドキドキが加速して行けば、凛太朗さんは身体を離してから笑った。
「うん。いい子だね。お風呂に入って来ていいよ」
「はい。行って、来ます…」
顔が熱い。恥ずかしくて彼の顔を見れない私とは異なり、何事もなかったかのように近寄って来たゲンマを抱き脚を組んでテレビを見た。
く、悔しいかも。私だけ、ドキドキして。
凛太朗さんはこう言うことには慣れていて、余裕な態度が羨ましい。
これを毎日本当にするの?おかしくなるかも。
頭と身体を冷やそうとソファから立ち上がりお風呂に駆け込んだ。