王子様とハナコさんと鼓星
彼の気持ちに答えたくて、彼の為になんでもしてあげたかった。
そして、ある日…事件は起きた。
『ねぇ、華子?すぐ近くのスーパーでさ万引きして来てくれない?』
『え…?』
身体を重ねた後、聡くんは唐突にそう言いだした。
『俺の事好きならなんでも出来るよね?もしかして、嫌いなの?』
『そ、そんなことないよ。大好きだよ』
『なら、できるよね。なんでもしてくれるって言葉は嘘なの?』
私を見下ろし伸びて来た手は顎を乱暴に掴み持ち上げた。
『お前はさ俺の言うことを聞いていればいいんだよ。この先、ずっとね。ほら、早く着替えていって来て』
怖かった。聡くんの言葉は乱暴で怖い。彼が私を見る目、鮮明に覚えてる。
過去の話を話すのは辛い。でも、凛太朗さんの追求に逃げる事は出来ない。顔を伏せて聡くんの話をする。相槌もなく聞いていた凛太朗さんは、途中で口を閉ざした私の顔を覗き込む。
「それで…言う通りにしたの?」