王子様とハナコさんと鼓星

「ねぇ、華子?」

「は、はい…」


「俺たちはお互いに両思い。だから、こうやって手を握ってさ、きちんと話し合って…また前に進んで行こう」

「凛太朗さん…」

「ごめんね。昨日は気持ちを押し付けて、本当にごめん。反省しています」

「違います。私がいけないんです。私が…凛太朗さんの言う通り…覚悟が足りなかったんです。凛太朗さんが私と向き合ってくれていたのに、私は…何も向き合おうとしていなかったから」


「華子は悪くないよ。思えばさ、結婚するって決めた日に華子は言っていたよね。「自分の気持ちを伝える事がどれほど怖い事がだなんて、何もかも手にしている社長になんか分からない」って」


覚えている?と、問われ、コクリと頷いた。


「その言葉に俺は言った。俺にはわからないって。なんでも持っていて自分に自信があるからわからないって。だから、自信がない華子を研究したい、俺がその考えをぶち壊せるか賭けないかって」


「はい。覚えています…」

「その賭けに華子は乗った。でも、その賭けは俺の負けだったみたい。俺は初めから華子の自信がない気持ちを理解する気なんてなかった。元彼の事とか強盗犯の事とか…俺と同じように結婚の事を思ってくれていると思って、華子が俺に言ってくれるとたかを括っていた。気持ちを伝える事が怖い華子を最初から理解していれば…こんなすれ違いになる事はなかったのに」
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