王子様とハナコさんと鼓星


「凛太朗さん、それは…違います」

「違くないよ。人はみんなそれぞれ嗜好や考えは異なる。俺と華子も同じ。理解出来なくて、すれ違ってしまう。通じ合える言葉だって、言えたり言えなかったり。俺たちは…あまりにも違いすぎる」


「…それは…もう、一緒にはいられない。そう言う意味…ですか?」


「そうじゃないよ。お互いが違うから、すれ違ってもいい。だけど、すれ違ったら…またこうやって向かいあって話そう。俺たちの言葉だけは唯一…通じ合える同じ言葉なんだからさ。これから先もすれ違ってもいい。その分、こうやって話し合おう。無理に合わせて理解する必要なんてない。それにさ…その方が、楽しいと思わない?」


「……凛太朗さん…」

「夫婦の形も人様々。俺たちは、俺達の形を一緒に作って行こう。これから、先…ずっと。向き合う事をやめない限りは、手を取って例え見ている方向は異なっても同じ道は歩けるから」


凛太朗さんはどうして、ここまで言えるんだろう。こんな風に…優しく、私を包み込むような沢山の言葉。

嬉しかった。凛太朗さんの思いが、嬉しかった。こんな私の為に、言ってくれた言葉は私の心の不安を取り去っていく。
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