王子様とハナコさんと鼓星
「俺じゃあ、ダメかな?華子の隣を歩く男として不満かな?」
「そ、そんな事ありません。凛太朗さんが…いいです。いつも、優しくて…たまに意地悪ですけど…私を守ってくれる。そんな凛太朗さんの隣を私も歩きたい」
「うん。改めて、よろしくお願いします」
握っていた手とは反対の手を伸ばされ、迷う事なく手を握った。
「はい。よろしく…お願いします」
照れ臭くて、つい視線をテーブルに落とす。
良かった。これからは、凛太朗さんと2人で進んでいこう。彼の言う通り、違う方向を見ていてもいいんだ。この手を離さなければ、同じ道を歩けるから。
安堵の息を漏らすと、凛太朗さんは手を離してテーブルに置く。顔を伏せる私の頭上に近づき小さな声で囁いた。
「ご飯、ここで食べる?それとも…早く家に帰って…昨日のやり直しでもする?」
「え…」
どっちがいい?と、追い打ちを掛けるように凛太朗さんの声が鼓膜を震わせた。
「あの、お腹も空いてて…あ、でも…家にも帰りたい…です。と、言うか…お店に入ったので…食べないのは申し訳ないですよね」
テーブルに座っただけで、帰るのは気が引ける。
「それも、そうだね。ごめん。ちょっと以上に気持ちが高ぶって来て。なに、食べようか?今日はどれがオススメ?」
「えっと、これです。私、買って来ます」
椅子から立ち上がり、凛太朗さんを置いて注文に向かう。彼を背後にそっと頬に触れてみると、とても熱い。
明日…仕事だけど…早く家に帰って触れたい。そんな事を考え、更に頬が熱くなった。