王子様とハナコさんと鼓星
エピローグ
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「聞いた?社長って結婚したんだって」
「え、うそ!?昨日の株主総会で発表したんだって」
「相手は誰なの?」
「それが、ホテルの従業員らしいよ。誰なのかは、主任ってば教えてくれなくてさ。なんでも、結婚した事は話してもいいけど、相手はその子がホテルで働きにくくなるから退社するまで秘密にして欲しいとか」
「と、言うことは…かなりの玉の輿じゃん。羨ましい…あの社長と結婚出来るなんて。きっと、24時間…お姫様のように扱ってくれるんだろうな」
「幸せなのは、間違いないよね。どうやって、そんなハイスペックな男を掴まえられたのか聞きたいんだけど」
「………」
ドア越しで交わされる会話を私は居た堪れない気持ちで聞いていた。
バックヤードの女子トイレ。一番は奥の個室で彼女達に聞こえないように息を吐く。
すると、頭上でフッと鼻から空気を抜くような息が漏れる。
「俺をゲットした理由が聞きたいってさ」
「ちょっ、話さないで下さい。聞こえちゃう…」
凛太朗さんと思いが通じて1週間が経過。
その間に、私との結婚を桐生グループの株主総会で発表した。
その場では私が相手だと言う事は包み隠さずに話したが、ホテルの従業員には結婚した事以外の情報をスタッフには話さないで欲しいと伝えた。
結婚の事、話が広まるのはそう時間が掛からないとは思っていたけれど、昨日の今日で一斉に広まってしまったのだ。