王子様とハナコさんと鼓星
「凛太朗さん、私の話を聞いていましたか?」
「だって、両思いで、株主総会での発表も終わって…強盗犯も捕まったんだよ。心配する事が減ったから、色々と楽しみたい」
実は一昨日、私を含めて3人の女性を襲った強盗犯が捕まった。
犯人は3人組。私を襲った2人が実行犯、バス停で睨みつけた男が主犯格。街を探索してターゲットを絞っていたらしい。
一安心した。これで、心置きなく街を歩けるから。
「あの、凛太朗さん?」
「ん?」
胸元にある凛太朗さんの手を握り、向かい合うように振り返った。
「私、今度こそデートがしたいです。映画が見たい」
「突然どうしたの?いいけど」
「凛太朗さんがこういう事したいように、私も凛太朗さんとデートしたいです」
「じゃあ、次の休みに行こうか。映画の他には何処に行きたいの?」
「ショッピングモールとか、王道ですけど…遊園地とか水族館とか…あ、動物園も行きたい」
「ははっ、子供っぽい事を言うね。でも、いいよ。順番に行こうか」
「ありがとうございます」
肩に手が回され、抱きとめられる。熱い抱擁を受け入れると、今度は前髪をかき分け傷痕から少し離れた場所に口付けを落とされた。