王子様とハナコさんと鼓星
「でも、友達がいます。その子が話しを聞いてくれるから頑張れています。あ、でも…なんなら結婚して退社とか1日数時間のバイトなんて良いかもしれません。なんて、社長にこんな事を…ごめんなさい…どうかしてました」
冗談と本気交じりで言うと、数秒の沈黙の後に社長が呟いた。
「その夢を叶えてくれそうな候補はいるの?」
「それはさっきも言いましたけどいないです。なのでこれから探します。社長と一緒ですね。婚活中同盟って事でどうしょうか?」
「いいね、気に入った。じゃあ、その夢を叶えてくれる以外にどんな人ならいいの?」
「なんか、突っ込んで来ますね。そうですね…優しい人って言うのは絶対です。後は怒鳴らない人がいいです。トラウマがあるので…怒鳴る人は男性でも女性でも苦手ですね。社長はどうですか?」
「基本的にはどんな子でもやっていける自信はあるよ。でも、敢えて言うなら…俺の夢を良いって言ってくれる人だね」
身体を起こし椅子に跨ぐように座る。寝転がったまま視線だけを社長に向けるとガタッと椅子が揺れる。
落ちるかと思えば伸びて来た手が耳元に置かれ顔を覗き込まれた。
星空なんて見えない。視界には私を勝ち誇ったような顔で見下ろす社長。
なにをされているのか、どんな体勢なのか、すぐには理解出来なくて何度も瞼を閉じたり開けたりを繰り返す。
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