王子様とハナコさんと鼓星


「あの…」

「俺の夢、わかる?」

「老後は別荘を…って話ですよね?みんな、素敵って言うと…思います」


「どうだろうね。この前同じ話をした子はそれ、本気ですか?って笑われたよ。田舎で隠居生活なんて面白い冗談だって」


「え…冗談だったんですか?」

「本気だよ。さっき話したこと全部ね」


耳の横に置かれた手が僅かに触れた。顔が途端に真っ赤に染まり、身体が熱くなる。


「そうですか…あの、それより…は、離れて、下さい…」


起き上がりたいけれど、目の前に社長の顔があって起き上がれない。顔をそむけようにも、両側に置かれた手がそれを許さない。


「俺の夢、素敵だと思うって言ったよね?」

「…は…はい…」

「なら、とりあえず同じ同盟同士って事で、俺と付き合ってみない?」

「は……え、えっ?」

顔が近づいて来て、何故か危機感を感じてマフラーを持ち上げて口元を隠す。


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