王子様とハナコさんと鼓星
第3話 The bud of the flower appeared
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その後、結局何も答えられないでいると社長はため息をついたのちに微笑み手を離した。
「考えておいてよ」そう言いベンチに寝転んで満点の星空を眺める。同じように寝転び上を見上げると、何個も流れ星を見る事が出来た。
時折り社長は私に星座の説明を沢山してくれた。それこそ聞いたことのないマニアックな話も。その説明は丁寧で、まるでプラネタリウムに来たかのような気分だった。
途中でコンビニで買ったご飯を食べて、星を眺める。
そうしているうちに、月が顔を出し戻ることになった。来た時同様に手を差し出され、恥ずかしながらも手を取り車に戻る。
「大丈夫?格好寒かったね」
「私は平気です。マフラーが暖かかったですから」
「それなら良かったよ」
車に乗り込み、シートベルトを閉める。ここでも社長は助手席のドアを閉じてから乗り込みエンジンをつけた。
その時、モニターに時間が映り思わず身を乗り出す。
「あっ!」
「どうかした?」
スマホを取り出して時計をみる。瞬時に血の気が引いていき力なく背もたれに寄りかかった。
「あの、門限が…」
「門限?あぁ…もう23時だったんだ。もしかして、村瀬さんって寮だった?」
「はい…」
(ど、どうしよう。しまった。やってしまった)
寮には一応門限が決まっている。夜の24時。それが私のいる寮の門限。男女が同じ棟で階別に別れているため、24時を過ぎると行き来を出来なくするために鍵を掛けられる。
その時間以外に出入りも出来るけれど、寮母さんに半日前には報告しないと入れてもらう事が出来ない。
厳しいようだけど、一流ホテルの従業員としての自覚をもつ為に厳しいルールがある。
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