王子様とハナコさんと鼓星


***


「へぇ…華子さんって、意外にやるね。見かけによらずかなりの肉食系」

「一ノ瀬くん、それは誤解です」


翌日、とあるカフェで桜と恋人の一ノ瀬くんとお昼ご飯を囲んでいた。

聞き捨てならないセリフに素早く突っ込んで返すと桜が頬杖をついて天を仰ぐ。


「本当にやるよね。まさか、私との飲みがなくなって社長とそんな展開になっていたなんて。しかも、門限過ぎるからって…スイートルームに1人で泊まらせてくれるなんて…羨ましい。スマート過ぎる」


「羨ましくなんてないよ。眠れなかった」


昨日、社長と別れて案内された部屋はスイートルームだった。てっきり、ツインかダブル程度だと思っていたのに何かの間違いだと何度も確認した。

それでもスタッフに間違いないと言われ、大人しく部屋に入ったもの中々寝付くことが出来なかった。


広い部屋に広い寝具。スイートルームなんてヴィア・ラッテアに入社したばかりの時に清掃で入ったのみ。


泊まる縁のない部屋だと思っていたのに、人生初のスイートルームが1人でしかも他社のホテルだなんて誰が予想した事だろう。


それに、それだけじゃない。朝になると社長が頼んでくれていた朝食が運ばれ何故かマッサージもされた。そして、更には支払いすら終わっていたのだ。

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