王子様とハナコさんと鼓星
いくらになるのか、心配していた。だから、内心は安心したけれど高額な部屋に泊まらせて貰ったことへの罪悪感は半日たった今でも消えてはくれない。
「まぁ、スイートルームに1人なんて落ちかないだろ。せっかくなら、一緒に泊まれば良かったのに」
ブラックコーヒーを一ノ瀬くんが飲みながら呟く。
「いやいや、付き合ってもないのにおかしいでしょ?」
「付き合ってって言われたんだから、付き合って泊まればいいのよ」
「無理だよ。好きじゃないもん」
「付き合ってから好きになってもいいだろ。あんな色男なんだし、好きにならない要素がない」
「そうそう。いい大人なんだからさ」
「ふ、2人で責めないでよ!」
テーブルに伏せ顔を隠す。2人には私の少ない恋愛経験ではキャパがすでに超えていた。だから、嘘偽りなく昨日の事を話してある。
そんなの付き合うなんて駄目!いきなり結婚しようなんておかしい!そう言って欲しかったのに、2人は終始わたしを責めるのだ。
「だって、あんなハイスペックな人の誘いを断るなんて華子だけよ」
「だ、だって…あんなハイスペックだからだよ。釣り合わなし、遊ばれているかも知れない。そう思うと怖い」
「あぁ言う立場だし、それなりに女を見てきたとは思うけど…冗談とかさ、からかって付き合ってとか、結婚しようなんて言わないだろ」
「私も奏多と同じ意見かな」
「それならなんで私なの?色々見てきたのなら私なんかと付き合って結婚とか利益にならないと思うな!」
会社のためとか、そう言う事を考えば同じくらいお金持ちで美人な人が似合っている。
「直感だろ。理由なんてない。女だって、この人と結婚するって思うだろ?それは男も同じ。自分に自信がありそうな人だから、それに従っているってパターンもある」
(そ、そう…なの?)
一ノ瀬くんの淡々とした言葉に伏せていた顔を上げる。
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