王子様とハナコさんと鼓星


「わかった。もう一度…聞いてみる。いや、実はさ…冗談とかからかっているって思ったけど、手を握られた時は一瞬だけ本気かもって思ったの。本能的にね」


「あのさ、冗談とかからかってるとか何も考えないで、あの人はありなの?なしなの?釣り合わないとかもなしでさ」


「あんな人だもん。それは、魅力的だよ。優しいし、お姫様のように接してくれるし、話も上手。きっと、もっと深く知れば好きになっちゃう」


「ほら、それでいいのよ。人生変わるかもしれないよ?思い切って飛び込んでみたら?」


桜の顔がだんだんと悪い顔になっていく。悪巧みを考えた子供のような表情。


「まぁ、大前提としてプロポーズの事を本気か確認してみてからだけど。私のことが好きなの?って挑発してみれば?」


「そ、そんな高度なテクニックを私が言えると思う?」

「あ!それ、いい提案ね!」

「ちょっと、楽しんでない?」

「華子が過去を忘れて前に進める事を願っているんだよ?ふふ」


そうは言っているけれど、顔は楽しんでいる。一ノ瀬くんも桜同様に微笑んでいた。似た者同士はそっちだよ。


人事だと思って。それから暫く、同じような会話を繰り返し、仕事のことや昔話などで盛り上がり気付いたら周囲は真っ暗になっていた。

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