王子様とハナコさんと鼓星
「なら、社長なら…どうするんですか?」
「どうする?さっきも言ったけど、俺のホテルに人を蔑んで楽しむ人間なんて必要ない。だから、左遷するんだよ。まぁ、非道だと思ってもかまわないよ」
「それは、社長がそれを出来る力を持っているからです。私は…新人で…力なんてない…」
「新人だから、言いたいことを言わないの?長くいて、地位がある人が言う事が絶対?例えそれが、人の道に外れた事でも」
「社長は、自信があるからです。私は自信なんてない。頑張って言い返しても、反撃されると怖くなる…辛くなる。上手く言葉を伝える事も出来ないし、そんな勇気も自信も私にはありません…」
「だろうね。村瀬さんって、自信なさそうだし、自分の気持ちを伝えるの苦手そうだから」
小馬鹿にするような微笑みに、頭に血がのぼる。鞄を握る手を更に強く握る。
「そう、ですよ。だから、社長にはわたしの気持ちなんて分からない!自分の気持ちを伝える事がどれほど怖い事がだなんて、何もかも手にしている社長になんか分からない!」
大人気なく大声を出してから、ハッと我にかえる。口元を手で覆い、怖くて社長の顔なんて見れなかった。
地面に頭をつける勢いで頭を下げると、エレベーターが到着する。
私を置いてエレベーターに乗り込むと、社長は開くのボタンを押したまま。
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